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特集 耳管機能検査
3.耳管機能と滲出性中耳炎
Relationship between the eustachian tube function and otitis media with effusion
山本 裕
1
,
髙橋 姿
1
Yutaka Yamamoto
1
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.899-903
発行日 2005年11月20日
Published Date 2005/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100215
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Ⅰ.はじめに
鼓室,乳突洞,乳突蜂巣からなる中耳腔は,骨組織に囲まれ薄い粘膜で被覆された空間である。中耳伝音系の機能が維持されるためには,この空間が含気化され,かつ大気圧と等圧であることが必要で,そのためには外界と交通していなければならない。一方,中耳腔は自声強聴が生じないために鼻咽頭と遮蔽されていることも必要となる。この背反する2つの機能をこなしているのが耳管である。加えて耳管には,貯留液の排出能や感染防御能も要求される。このことから,中耳腔を生理的な状態に保つ役割の多くを耳管が担っているといえる。また,中耳炎症性疾患が成立するにはさまざまな要因が複合的に関与するが,耳管の機能不全は,その中で最も大きなものと考えられる。
滲出性中耳炎の病態の説明として,耳管閉塞が起こると中耳腔内の陰圧化が生じ,それにより血漿成分が析出し,液の貯留が起こるという補腔水腫説が古くから支持されてきた。この概念は,現在に至るまで滲出性中耳炎の成り立ちを説明するうえで最も基本的な考え方となっている。しかし,滲出性中耳炎の病因は多岐にわたり,また耳管が担う機能も多様なため,補腔水腫説のみでは滲出性中耳炎の病態をすべて説明することはできない。本稿では,滲出性中耳炎の成因,病態と耳管機能との関係について過去の報告を紹介しながら考える。
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