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学会雑感
6月19日夜むし暑い日本を飛び立ち,アンカレッジ・ロンドン,アムステルダムを経て6月20日夜ようやくブダペストのホテルにたどりついた。翌21日午後5時から会場のCongress Centreで開会式が行われたが,会場がどこにあるか分らず,どうやって行ったらよいのか困惑した。Congress Centreは広い敷地内にあってRegistra—tionが行われる建物と講演が行われる建物とは100メートル位離れていた。そして午後8時からSemrnelweis医科大学の研究センターでレセプションが行なわれ,開会式の会場からバスで送ってもらった。レセプション会場の入口が狭い為に会場に入るのにやや混乱したが,中は広く,食物・飲物も豊富で,ブダペストに来てはじめてハンガリー音楽を耳にし,また日本ではしばしば経験するうんざりする様な長い挨拶もなく,とても良い雰囲気であった。22日朝8時30分より第1会場で最初のPle—nary sessionがはじまった。会場は全部で9つに分かれており,第1会場のみ同時通訳(英語,ドイツ語,フランス語,スペイン語,ロシア語)が行なわれた。主会場となった第1会場は丁度体育館といった感じで,天井は鉄骨がむき出しで,音が反響してしまい聞き取り難く,同時通訳のイヤホーンを通じて聞く方が分かり易かった。また十分に室内を暗くする事が出来ず,特に螢光抗体のスライドは殆んど分らなかった。第2会場以下は小じんまりとした広さで部屋も暗くなり,同時通訳がない事を除けばむしろ第1会場より優れていた。日本の学会では必らず見られるスライド受付はなく,スライドをやってくれる人に直接渡さねばならず,多少とまどった人もいたようであった。学会は26日迄5日間に亘って行なわれたが,この内Plenary sessionには慢性中耳炎,喉頭癌,内耳手術の3つが取り上げられ,慢性中耳炎の部門では東海大の坂井先生がModeratorとして活躍され,これには本多教授も参加された。この他SimultaneoussessionおよびRound table discussionが34 sessionあり,さらにfree paperが約600題,展示演題約80題,映画演題,約90題が出題された。日本からの出席者は300人以上といわれ,勿論第1位で,日本の事情にうとい外国人は日本にまだ耳鼻科医が残っているのかと本気で心配していた位であった。次に多かったのがアメリカ,次いで西ドイツの順であった。あるドイツ人はこれは日本の自動車と同じで,日本はどんどんヨーロッパをせめてくると冗談まじりに言っていたが,これは彼等の本心であるかも知れない。演説に用いられた言葉は,筆者が聞いていた限りでは,95%以上は英語,1-2%がドイツ語かフランス語,のこりがスペイン語かロシア語といった感じであったが,同時通訳のない会場では英語以外の演題は意志の疎通が中々うまくいかず,しかも抄録は学会当日に配布された為,演者にも聴衆にも欲求不満を来たしたものと思われる。今後の国際学会のあり方としては,英語だけにしぼるか,あるいは会場全てに同時通訳をつけるか,どちらかを選択する必要があると感じた。
Plenary sessionあるいはRound tabte discussionの演者で場なれしている人は短時間で極めて手際よく話し,自分の主張を強く聴衆に印象づけようとするが,中には自分の研究を初めから終りまで延々と演説し,聴衆もあきてしまい,結局何を言いたかったのか聴衆が理解出来ないという演説もあった。出来るだけ要領良く話し,聴衆に理解してもらえるよう最大限の努力を払わねばならないとひしひしと痛感した。この様な国際学会にはなるべく若い人が参加し,その雰囲気に慣れておく事が大切であると思われた。
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