特集 第1回国際神経科学会展望・2
第1回国際神経科学会印象記
冲中 重雄
1
1東京大学
pp.627-629
発行日 1958年4月30日
Published Date 1958/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901630
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今回の国際神経学会は神経学に関する各領域の専門家が集まつた第一回合同のCongressで,その範囲はすこぶる大であるが,一面,散漫になり過ぎたきらいも多分にあつたと思う。米英仏を中心に,独逸その他世界各国から数千名の参加者があり,大変華々しく.日本からも多数の方々が出席,それぞれの方面で活躍された。私は1931年であつたか,スイスのBern市で開かれた第1回Congrès Neurologique Internationalに故呉建先生のお伴をして出席したことがあるが,その時の印象は深くは思い出せないが,選ばれた一流の学者のみの演説が行われ,もつとまとまつていたように思われた。
今回の学会では神経学の色々の方面がとりあげられた事はいうまでもないが,私の印象では,脱髄性疾患.意識の問題,錐体外路生運動異常に対するStereotaxic Operationによる治療,脳波等が一番興味を呼んでいたのではないかと思う。脱髄性疾患(多発性硬化症等)については総会演説としてKurland氏(米国)とMcAlpine氏(英国)がそれぞれ,地理病理学的(カナダに於ける)調査についての発表,双生児のm.s.患者の観察から,弱いけれども遺伝因子の存在することをのべた。多発性硬化症の地理病理学的分布については,目下の所,本症が欧米に多く,東洋諸国には少いという漠然とした知識しかないのであつて,今後の世界的な正確な調査が必要とされている。
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