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外耳道真菌症は乾性と湿性とに大別される。乾性型はaspergillus, scopulariopsis, penicilliumなどの真菌によつて惹起されるが湿性型ではcandidaを検出することが多い。臨床症状はいずれも耳掻痒感,耳閉塞感,難聴,耳鳴などであるが耳鏡所見ではやや異なり前者は骨部外耳道深部から鼓膜にかけて膜様物形成がみられ,その色調も特有で黒,黒褐色なかには黄色を呈するなどあざやかなものもある。後者は粘膿性分泌物が貯留しており,その表面に白色の粉粒物がみられる。次に治療上の要点からその差をみてみると前者は膜様物の完全除去を主眼として,その後の再発を防止すれば良い。この膜様物は元来剥離困難とされているが,現在市販されているワックスネート(主成分ジオクチルソジウム・スルホンサクシネート)などで溶解し耳洗やmicroscopeなどで完全に除去できるようになつた。その直後より1〜2%ゲンチアナ・バイオレットや0.1%マーゾニンあるいは0.02%フェニール酷酸水銀液などを局所使用すると再発もある程度防止できる。ところが後者の場合は前者ほど容易でなく,また再発傾向も強い。前者で用いた局所療法剤を使用するとたしかに一時的な効果を示すが,やがて湿潤してくる例が多い。後者の病態を示すものには,この他慢性中耳炎や術後性中耳炎の術創などがある。
いずれにしても両型とも長い経過を観察すると再三再発を繰返すことは確かである。しかし前者は乾性を持続する限りそれほど惹起要因などを考慮する必要がなく耳科医にとつて比較的組みし易い病型である。ところが後者の場合はその複雑な臨床経過から考えて当然Hostの内因的因子やその他の一次的ないし二次的要因を考慮しなければならない。その要因の一つとして微生物間の関係すなわち細菌と真菌との混合感染も無視できない。ここではこの問題に的をしぼつてみる。
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