- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.緒言
慢性外耳道炎(外耳道湿疹)の原因の1つとして,従来より真菌類による感染が指摘されてきた。かかる真菌感染すなわちOtomycosisなる疾病については,Valetin Whalen,Syverton,佐々木,山下,三辺らは真菌を第一義的原因菌として挙げ,各種臨床症状について詳細な記載を行なつている。しかるに1948年にConleyがこれに対して懐疑的見解を発表し,第一義的原因菌としてPseudomonas auriginosaなどの細菌を重要視し,真菌は単に第二義的腐生的感染である場合が多い事を主張した。著者の1人古内も「耳鼻と臨床」(1960)にOtomycosisの原因論として,かかる症例をとりあげsymptomatic Otomycosisが高頻度にみられることを主張した。特に試験管内および動物実験において,細菌(Proteus vulgaris,Pseudomonas auriginosaのクロラムフェニコール10γ/cc耐性菌)がCandida albicansと共生的現象を呈することから,グラム陰性桿菌が真菌の発育に対して好影響を与え,かかる細菌感染による外耳炎に真菌の二次的腐生的感染が加わることを指摘しアメリカ学派の見解を支持した。
かかる見地より,従来使用されてきた種々の培地(Sabouroudブドウ糖加培地,Littman培地,Lot 57(正古培地))は真菌と細菌とが同時に培地上に発育し,真菌の分離が困難であることが多い。この点から培地の改良が検討されつつあり,われわれも抗生物質を培地に加えることにより細菌の発育抑制を企図してきたが,年々薬剤耐性株が増加の傾向にあり,また菌交代現象によりグラム陰性桿菌(自然耐性菌を含む)が残存し,交代菌症発生も考慮される現況である。しかるに1960年水野教授は宿題報告「産婦人科領域の真菌症に関する研究」において,かかる雑菌抑制培地として「水野,高田培地」(以下MT培地と略)を発表し,その優れた培養成績について発表報告した。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.