特集 今日の耳鼻咽喉科
日常診療に必要な知識
治療方法
薬液の鼓室腔内滴下と蝸牛障害—聴覚電気生理学的研究から
志多 享
1
1京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.867-873
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208981
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I.はじめに
鼓室腔内への薬液注入は鼓室成形術に際して術前,術中あるいは術後によく行なわれる処置であるが,それだけでなく日常の外来耳科臨床においてももつとも頻度の高い局所療法の一つである。しかし鼓室腔内には蝸牛基礎回転鼓室階の開口部としての正円窓があり単に正円窓膜一枚のみで内耳と中耳が境いされていることを絶えず頭に入れておかねばならない。鼓室腔内の薬液による洗滌あるいは注入がroutineの処置であるだけに耳科医の一般常識としてこの処置がどのような危険性をもつているかについては十分知つておく必要があるわけで,この立場から私どもがモルモットを使つて行なつた聴覚電気生理学的実験成績を基にしながら鼓室腔内の各種薬液注入と内耳障害発生との相関性について私見を述べてみたい。
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