鏡下咡語
沖縄の医療の現況—琉球大耳鼻科の現状を中心に
野田 寛
1
1琉球大学保健学部附属病院耳鼻咽喉科
pp.960-961
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208820
- 有料閲覧
- 文献概要
私が当地沖縄に赴任して,早くも5年になる。当時,まだ「黄色んぶくれていた」と云われるように,約1年間の肝炎との闘病後間もない私が,恩師斎藤英雄教授の勧めにより,琉球大学保健学部附属病院耳鼻咽喉科に,沖縄百万県民に対する四百数十番目の医師として赴任したのである。押し寄せる患者さんと無我夢中で取り組んでいる間に,逆療法というべきか,病前以上の体力を回復していたのは誠に不思議なことであつた。やはり恩師の勧めることはすべて思慮深いもので,したがつて無条件に従つておくべきと思う昨今である。
さて,沖縄県が南海に隔絶されているため,誰もが概念的に医療僻地と感じているものの,さて実情となると,沖縄出身の国費医学生すらよく知らないのである。国費医学生とは,戦後米軍統治下にあつた沖縄で,医師養成機関がないため,日本各地の国立大学医学部に送られて,医学教育を受けている学生で,毎年沖縄で約60名が選抜される。昨年よりその数は半減されているが,琉球大学に医学部が設置されるまで続けられる筈である。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.