特別連載
沖縄の医療事情(1)―その形成過程と現状【新連載】
田中 恒男
1
1東京大学医学部保健学科保健管理学教室
pp.655-658
発行日 1972年10月15日
Published Date 1972/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204563
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第2次大戦終結後,二十有余年を経て,沖繩はようやく米国の支配から脱することとなった.これが沖縄にとって,真の解放であったか否かについては,多くの論議があり,本土復帰が沖縄にとって何を意味するものであるかは,これからの歴史の中に語られるべき事柄であろう.筆者は,昭和46年4月末から同47年2月に至る期間に,合計4カ月を公務のため在琉し,沖縄の諸事情について多少の情報も得,若干の自論を形造ることがあった.その一部については,すでに発表したが1)2)その基調は大和文化圏といわれるより,むしろ黒潮文化圏とでもいうべき,独自の文化や価値体系の中に,沖縄を位置づけるものでなければ,沖縄を論じたことにはならないとするものである.
この見解には多くの異論もあろうし,とくに行政担当者からの反論もあるかと考えるが,米国の統治期間に米国自らが沖縄の近代化に失敗したこと,少なからぬ業績を医療面でも沖縄自体で(その文化背景を前提として)つくりあげてきたことなどから,一応の妥当性はありうるかと考えている.
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