特集 外傷
顔面外傷診断の要点
田嶋 定夫
1
,
太田
2
1慶応義塾大学医学部形成外科学教室
2済生会神奈川県病院歯科
pp.723-739
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208407
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I.はじめに
顔面,頸部の部位別の損傷は各々専門の先生方が述べておられるので,さて診断の要点はということになつても既に詳述しつくされている筈である。そこで顔面骨の骨折に限定して初療時の診察の大筋と一骨折例の主な症状について述べてみたい。
およそ外傷である限り損傷の多様性を念頭に置かねばならない。そして損傷の評価,適切な治療方針の決定は多くの場合emergencyであることが多い。したがつて外傷そのものを1つのentityとして把え,常に効果的に対処できるように心の準備を整え,取り扱いの手順もある程度ルーチン化しておくことが大切と考える.軽傷ならいざ知らず,中程度以上の外傷ではvital signの確認から始まり,救命手段,全身のcheck up,局所損傷の評価,緊急手術の要否,厳重な経過観察の要否など各科にまたがるteam approachが必要となる。そして局所の損傷の軽重によりteamの1人がいわばコオーディネーターとしての役割を果すとともに各人が責任をもつて経時的に症状,所見の推移を監視する体制が理想である。顔面外傷もこのような体制の中の1つとして取り扱われることになる。現実には1人または小人数でteamapproach的体制をとらざるを得ないことの方が多いであろう。そこで"外傷医"または救急医とも呼ぶべきGebietが好ましい,そこまで至らなくても外傷を"正当に"扱う様に配慮するだけでもより効果的な対処が可能であろう。特に,生命に直接関連することが少ないとして放置されがちな顔面外傷ではその恩恵を受けることが大きいであろうし,陳旧例となつて悩む患者も激減するであろう.
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