創刊50周年記念特集 今日の耳鼻咽喉科/治療のコツと全身管理
耳—症候と疾患
耳真菌症(Otomycosis)
小西 静雄
1
1川崎医科大学耳鼻咽喉科
pp.737-738
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208715
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外耳道皮膚は耳道腺(アポクリン腺の変種)からの分泌物が酸性であるため,病原菌が感染しにくい状態にあると考えられる。しかし骨部外耳道皮膚は非常に薄く,それに連続している鼓膜表面の表皮も,一般体表皮膚とは著しく異なつた状態におかれている。そのため,いろいろな刺激に対して抵抗力は弱く,炎症が生じた場合,炎症性分泌物によつてアルカリ性に傾き,感染を受けやすく,かつ治癒しにくくなると考えられる。真菌症はこのような場合における感染症の一つであり,骨部外耳道と鼓膜の表皮に多く,浅在性病変である。耳掻痒感のため,耳かきなどで外耳道の掻爬を繰返し長く続けているものなどでは,その刺激が原因となり炎症が生じて発生しやすい。またopen methodによる鼓室成形術後の乳突腔などにも発生しやすく,落屑物の堆積や腔内の高温多湿が原因と考えられる。近年における抗生剤の使用による菌交代現象,副腎皮資ホルモン剤含有の点耳薬が関係することもある。外耳道に炎症があり耳漏を認めるときや,耳垢様膜様物が繰返しできるときなどは,真菌症を疑つて,細菌検査とともに真菌検査を行なうことが望ましい。
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