特集 耳鼻咽喉科診療の経験と批判
真菌症
川上 頴
1
1横浜赤十字病院耳鼻咽喉科
pp.845-850
発行日 1970年10月20日
Published Date 1970/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207546
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I.はじめに
医真菌の感染症は,WeinsteinらのPenicillin,Streptomycin療法による菌交代症として改めて注目されて以来,Steroid hormone剤の多用,抗腫瘍剤の連用や放射線治療に伴つて生体の感染に対する抵抗性減弱が真菌感染の誘因となる症例が増加してきた。
耳鼻咽喉科領域においても真菌症は,臨床上多くの問題を提起している。
真菌症の診断学的検索方法の進歩は,真菌感染実験研究の成果と相まつて,真菌症の病像の解明に資するところである。
真菌は元来腐生的な場所に定着しやすく,腫瘍壊死組織や潰瘍面を被覆して,真菌にmaskingされた原病の誤診を招いたり,原病の治療を遷延させる結果となることがある。
しかし,慢性消耗性疾患,重篤な血液疾患や悪性腫瘍などのterminal infectionとしての真菌症への対処は考慮されるところである。
当科で,最近1年間に耳鼻咽喉科感染症から得られた検体の細菌学的分類は第1表のごとくで,真菌症ではCandidaが多くみられ,中耳に4例,口腔に28例,ついでAspergillusが外耳に3例,副鼻腔に1例となつていた。Actinomycesが副鼻腔に1例みられた。
耳鼻咽喉科真菌症の臨床所見,診断および治療について概説し,現状の真菌症診療上の問題点に言及した。
また,真菌症の診断や治療の面で,最近の経験症例の二,三を例示した。
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