特集 外傷
鼻腔および副鼻腔の損傷
内田 豊
1
1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.785-793
発行日 1976年10月20日
Published Date 1976/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208412
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I.はじめに
顔面頭蓋の構成の中で,鼻副鼻腔の占める位置はかなり広くかつ奥行きの深いものである。そこで顔面頭蓋の損傷を顔面形態の修復という立場からみると,それは支柱組織を再建すればその目的を達するように考えられるが,これは内腔性の臓器の損傷でもあるという観点からすると,支柱の再建はもちろんのこと,内腔の壁,内腔に通ずる管や孔の修復までも当然必要となり,ひいては腔や管や孔によつて営なまれている機能の修復にまで到らなければならないと考える。自然の修復の機転は受傷直後から開始されており,この内腔の微視的な基本構成の単位である骨や骨膜,あるいは粘膜は一般外科的治療によつても治癒へと向うことにはなるが,その腔や管や孔がもとの働きをとりもどす方向へ向うとは必ずしもいいきれない。そこに鼻副鼻腔損傷の診断から治療に到る問題点があるように思えるのである。いつたん起こつた損傷が,痕を残さず完全にもとの形に戻る,あるいは戻すことは理論的には不可能であるが,この痕を最少限にとどめることのできるチャンス(ゴールデンタイム)は新鮮例の時期にあることから,以下主に新鮮外傷を中心に述べてみたい。
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