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Ⅰ.緒言
レントゲンによる喉頭疾患の診断は,喉頭高圧X線撮影法の開発によつて非常に簡素化され,しかも声門下腔,モルガニー洞,梨状陥凹など間接喉頭鏡下に観察しにくい部位の状態や,頸部食道,気管,甲状腺など間接喉頭鏡下には観察することのできない部位の診断のために貴重な情報が得られるようになつた。われわれも外来臨床において,咽喉頭頸部食道に関する症状を訴えて来院した患者は原則として全員,吸気時・発声時で正面・側面,計4枚の喉頭高圧X線写真を撮り検討している。そこで喉頭を中心としたその読影に関しては,かなり詳細に分析し的確な診断をくだしうるのであるが頸部食道を中心とした部分,すなわちここで問題としている頸椎と気管との間の部位に関しては割合に知識に乏しいように思われる。しかしこの部は臨床的には多くの重篤な疾患を内蔵している部分であり,決して軽視してはならない場所である。われわれは,以前よりある種の頸部疾患において頸椎気道間の距離が拡大していることに気付いていた。しかし頸椎気道間距離が拡大しているか否かを決定するには,まず判定基準の設定,すなわち正常値を知ることが必要である。文献的には1930年,Hay1)が頸部側面X線により,postventricular soft tissue,postcricoidsoft tissueの計測を行ない報告している。しかしこれは外人で得られた結果であり,体格のことなる日本人にあてはめることは,問題がある。今回われわれは41名について調査を行ない計測方法および判定基準を決定し,各種疾患において比較検討し興味ある結果を得た。このレントゲンによる頸椎気道間距離計測は,患者に何ら負担を与えずまた煩雑なものではなく,日常臨床において十分役立つものと考えてここに報告する。
Since the advance of the usage of high voltage radiography the diagnosis of many laryngeal diseases have been enabled to become more accurate. However, the importance of the distance that is found lying between cervical vertebrae and trachea has not yet been recognized. The authors made such measurements in 41 subjects, with the following results: (1) The distance at the level of the 6th cervical vertebra does not correspond to the sex, weight, stature nor to the size of the neck.
(2) The distance at the 7th appeared to be corelative to the size of the neck.
(3) The mean distance at the 6th cervical vertebra measured 11.8±0.3mm. The authors propose 13 mm as the standard of enlargement of the distance.
(4) When the distance is found to be increased the patient should be further investigated more thoroughly by means of esophagoscopy and esophagrams.
(5) The disease in which the distance may be increased are laryngeal cancers,hypopharyngeal cancers, esophageal cancers, retropharyngeal abcesses and thyroid cancers.
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