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Ⅰ.緒言
近来喉頭疾患に対する音声改善手術の進歩にともない,聴力改善手術に対する聴力検査と同じように,他覚的音声検査の確立が強く望まれてきた。一方では,一般的な音声検査の方法やその表示の仕方などについての提案も行なわれている1)。音声のひとつの要素であるピッチを考えてみた時に,あらゆる音源の基本振動数を抽出することは,巨大な電子頭脳,複雑なプログラム,各種の表示装置などを用いれば,いともたやすく解決される問題であろう。しかしながらそれはわれわれ一般臨床医にとつて望ましい条件を満たしているとはいえない。その条件とは,①誰にでも使用できること,②誰が使用しても同じ結果の得られること,③小型で持ち運びが容易なこと,④安価であること,などである。さて従来から声の高さを決めたり話声位をもとめたりするのに,ピアノなどの楽器の標準音と比較対応させるという方法がとられてきた。たとえば,声域はg〜c"でd"がまつたく欠損しているというように表現される。この場合には特別の装置を必要とせず,簡単にして望ましい方法であるといえる。しかしながら特別の装置を必要としない代りに,ある程度訓練された検者の頭脳を必要とする。すなわち音楽的に訓練された検者ならば,この方法は望ましいといえる。しかしながらこの方法はさきに述べたすべての条件を満たしているわけではなく,特に誰にでもできるのでなければ,音声検査の重要性を広く知らしめて,その普及化に役立てるのは容易ではないと考えられる。
そこで以上の点を考慮して,慶応義塾大学工学部電気工学科との共同研究により,臨床的に容易に使用し得る小型の基本周波数抽出器を作製すべき努力を重ねてきた。従来から基本周波数を抽出するために,Grüentz型2),相関法3),あるいは,音声のピッチは声帯の振動の基本周波数に対応するものであるという考えにたつて,気管外壁の振動を用いる方法4)などさまざまな試みがなされてきたが,ここに独自の方法で,さきに述べた条件をほぼ満たすと思われる小型軽便な基本周波数抽出器を作製することに成功した。すでに福田5)は本器を用いて良好な結果を得ているが,今回は,その根本的な原理や,その使用の実際に関しての概略について報告する。
In order to facilitate making of objective measurement of speech and voice the author, in collaboration with the Electrical Engineering Department of the Keio University, devised a new type of "pitch extractor". This instrument is relatively small in size, portable and operated with convenience even in the out-patient department. It could be used as a suppletory device for measurement of voice disorders as well as an aid to the correction.
The author states that this instrument may be regarded as an important instrument with which to make voice evaluation.
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