Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
脈管系由来の良性腫瘍の報告は昔から非常に多い。しかしその発生由来,腫瘍の分類,治療法についての見解は,なお今日まで区々の様である。この理由は,腫瘍の分類法が病理組織学的なものと,臨床所見から分類したものと区々である事,人により,両者を勘案して分類したものも多い事,あるいはさらに,発生病因も色々と論議されてはいるが,いまだ確固たる定説は存在しない事等々によるものであろう。
われわれ臨床家が,いわゆる脈管系腫瘍"Vasoformative Tumor"をいう場合,それはすべて血管系ならびにリンパ管系起因のangiomaをいうのが普通である。しかしわれわれがこのangiomaと呼称している腫瘍を分類した時,リンパ管系由来が主体のもの,あるいは血管系由来が主体のものの両者,すなわちリンパ管腫あるいは血管腫と通常呼称しているものに,大きく分けられる。しかし時として臨床所見および病理組織学上,両者が混在している場合も多く,われわれの考えでは,この両者を一括してやはり脈管系腫瘍として取扱つた方がよいと思つている。
耳鼻咽喉科領域で,この脈管系腫瘍が治療されるケースが多い理由は,発生学的には,大多数のangiomaは,頭頸部に発生するといわれ,たとえばWatsonおよびMcCarthy13)(1940)の統計をみると,1396例中頭頸部に発生する比率は,56%と過半数を占めており,さらに特異な事は,その73%が出生時に存在し,12%は出生後1年以内に発生し,しかも発生当初は,発育は急激ではあるが,多くは青年期になると沈静化し,腫瘍の発育は停止するものが多い事や,新生児の腫瘍統計では,第1位をしめている事等々からである。
反面,治療法を文献からみると,戦前はもつぱら保存的療法が主力をなしてきたが,最近は積極的な外科療法が用いられ好成績が報告されている。一方,先に述べた如く,本腫瘍の発育は,初期においては,急激ではあるが,青年期に達すると発育が沈静化し固定するという特色があり,もしその発育が急激ではなく,また隣接重要器官に障害を及ぼさなければ,保存的治療で十分との考え方も多い。以上の事から,著者は主として,耳鼻咽喉科領域で観察される脈管系腫瘍の治療法について,過去5力年間の症例を中心としてわれわれの経験をつづり,大方の参考に供したい。なおわれわれの症例は,主として新生児より30歳までのものに限定し,成人後発生した脈管系腫瘍(主として悪性)ないしはこれに準ずるものは除外してある。
The authors report their experience of 5 years study on the treatment of angiotenic tumors involving the region of the head neck, as follow:
(1) Though the tumors arising from the lymph and the blood vessels are considered to be similar, their respective treatments should follow a different course.
The lymphatic tumors are preferably dealt with surgery, while the blood vascular ones should be given individual considerations most fitting to the situation.
(2) Each case should be given a aareful x-ray examination before any treatment is instituted.
(3) Vascular tumors appearing in the facial region should be treated by either, arterial ligation, electrical cauterization or injections of coagualting agents instead of surgery.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.