特集 最近の顔面神経障害の基礎と臨床
側頭骨内麻痺の予後と損傷部位診断
柳原 尚明
1
1京都大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.747-755
発行日 1971年10月20日
Published Date 1971/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207692
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顔面神経は内耳道底から顔面神経管に入り,約3cmに亘つて同管を貫通し,茎乳突孔より側頭骨外に出る。その長さと,歩行の複雑さは,全末梢神経の中で随一である1)。また,顔面神経管は,狭い所では直径ほぼ2mm,広い所でも6mmの細管であり,顔面神経は同管の20ないし60%を占め,神経と管壁の間の間隙は強固な線維組織と豊富な血管によつて占められていることが知られている2)-5)。これらの顔面神経管の構造上の特異性は,顔面神経が側頭骨内で炎症,循環障害,外力などによつて損傷を蒙り易いことを示唆するものである。
臨床統計によれば,ベル麻痺,ハント症候群,頭部外傷による麻痺などの側頭骨内顔面神経麻痺が全末梢性顔面神経麻痺のほぼ90%を占めている。この事実からも側頭骨内における顔面神経の易受傷性が理解されよう。
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