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I.はじめに
月経前期といわれる期間にさまざまな不快症状がみられることはよく知られている。頭痛,嘔気,便秘,精神不安状態などが代表的なものであり,その起こる期間は月経開始前10日前後である。時には耳鳴,眩暈もみられる。このような症状を一括して,いわゆる月経前症候群(Premenstrual Tension)と呼ばれることがある1)2)。女性ホルモンの全身に対する影響は広く,しかも月経,妊娠,産褥などにおいて目立つた消長をしめすことから,耳鼻咽喉科領域においてもこのホルモンとの関連において数多くの報告がある。このなかには内耳に関する報告もみられ,なかでも産褥,妊娠の時期の報告はきわめてくわしい。月経周期に関する前庭症状,蝸牛症状の報告はすくなく,最近のものでは市原3)によるものがあるくらいかと思われる。今回の報告は月経前症候群にふくまれうると思われる症例であつて,38歳白人女子が月経前期に繰り返した内耳性と推定される聴力障害をきたしたものである。なお,これは本邦症例ではなく,著者が留学中に,1965年4月のニューヨーク大学医学部月例会に発表したものであり,すでに英文で投稿せるMiller博士4)の了解のもとに発表するものである。
A woman, aged 38, complained of recurrent aggravation of hearing loss during the premenstrual period. These losses are accompanied by tinnitus high pitched in quality and appeared about the 10 th day before the menstruation began. A possible relationship with the so-called "premenstrual tension" is considered in this case.
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