特集 耳鼻咽喉科手術の危険度
喉頭
食道鏡
佐藤 博
1
,
高橋 英世
1
1千葉大学医学部第二外科学教室
pp.814-816
発行日 1969年10月20日
Published Date 1969/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207370
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食道はそれ自体,位置,形態ともに,解剖学的に非常に変化に富んでおり,食道と周囲臓器との結合は脆弱にして粗糙である。また,本検査は経口的に行なわれる関係上,口腔内の種々の細菌に汚染されているために,偶発症を起こしやすく,また,重篤なる状態に陥りやすい。Palmerらによれば,食道鏡操作による食道穿孔の発生頻度は,400〜500回に1例と報告している。教室では,昭和40年1月より昭和43年12月までの4年間に,食道噴門癌318例を含む915例に食道鏡検査を施行しているが,診断的食道鏡挿入症例では,5例の合併症を認めているが,いずれも,発熱,圧痛,嚥下痛が主な症状で,うち食道癌術後にて本検査後に食道損傷を疑わしめる左胸腔内に胸水貯留を認めた症例を経験したが,幸いにも重篤な状態に至らず軽快している。
食道拡張術は,現在でも,その多くは,硬性食道鏡挿入により行なわれているために,その危険度は,単なる診断的に食道鏡を挿入する場合よりは,はるかに高いのが普通である。Olsenらは60例に1例の割で発生すると報告しており,発生頻度は1.67%と高率である。教室でも,食道癌根治手術後の吻合部狭窄に対して,鯨骨ブジーにより拡張を行ない,検査施行後,左胸腔内に胸水を認め,検査後1週間目で亡つた症例を経験している。
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