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Ⅰ.まえがき
広義の中耳癒着症に関するわれわれの概念については"耳鼻咽喉科36巻2号1964"に既報したごとく,臨床上つぎのような広範囲のものを一括包含することとした。1)慢性癒着性中耳炎,2)鼓膜癒着症,3)慢性中耳炎後遺症,4)中耳手術後性後遺症,5)特異性炎症の後遺症,6)特殊化学薬剤,また抗生物質使用後の後遺症,7)素因(体質,遺伝,過敏症,アレルギー,リウマチ様各種疾患,膠原病,分泌障害,諸代謝臓器障害),8)先天性ならびに後天性異常,9)諸種外傷性後遺症などである。これら諸疾患などはその発症,誘因,経過などで,それぞれ疾患名も上記のいずれかに該当するが,その本態は概して複雑な癒着症状あるいは癒着現象を示していることである。そしてその聴力像は中耳性難聴,すなわち伝音型の難聴を示すもののみならず,混合型,時に内耳,神経性難聴型を示すものもあつて,その聴力像だけでも各種各様な型をとることが日常経験される。これら各種の聴力障害耳を再検討し,あるいは再整理するには,その局所病態の諸様相を多角的に観察し,かつ分析して,しかる後にその改善方策を計画するのが順序であろう。すなわち一般病理組織学的検索のほか,組織化学的または電子顕微鏡的検索も重要であろう。この点まだ従来の観察においても不十分な点が多々あるように思われるので,従来の癒着性病変と称される癒着性中耳炎,鼓膜癒着症の他,各種の中耳癒着症の本態をまず究明整理する目的で以下の文献を再吟味し後述する分類に従つて調査すべきであると思う。
広義の中耳腔癒着現象に対し,われわれは一応癒着症と総称するが,従来この名称に対する外国名にも適当なものが見当らず,また明白な解釈もない,たとえばadhäsive Prozess,adhesion,residue,fixation,clinical otosclerosis,tympanoclerosis,Paukensklerose,Pseudo-otosklerose(-sis),cicatoricus,Rückstände u. Verwachsungen in der Paukenhöhle,Residuenund sog. Adhäsiv-Prozesseなどの名のもとに臨床上,病現組織学上の記述がなされている。
The authors attempt to make analysis and classification of what is known as the adhesive processes of the middle ear in their broad sense of the term, gleaned from the cases reported in the literature, in accordance to the etiology of the maladay.
I. General classification: (1) Anatomical changes in the middle ear, (2) inflammatory changes, (3) traumatism and (4) congenital deformity.
Ⅱ. Pathological changes: (1) Secretory otitis, (2) suppurative changes and (3) mucous membrane, bony, muscular and cartilagenous changes.
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