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I.はじめに
中耳癒着症について考え,論ずるに当つては,中耳癒着症とはどういうものを指すのか,その点からまず明らかにしておかなければならない。このものは中耳のどこかに癒着性変化があつて臨床的に症状を起こしているものと考えるのが妥当である。したがつて本症はその発生原因が何であろうと中耳に癒着性病変を起こすものはすべて含まれることになる。そのために先天性耳小骨癒着,外傷性のもの,炎症後に起こつたもの,アレルギー性変化に伴うもの,手術によるもの,中耳陰圧後に起こるものなどが含まれる。しかしながらこれら原因があればすべて中耳癒着症を惹起するのでもない。すなわち本症の代表となり得るともいうべき鼓膜穿孔を伴わない中耳カタルにおいても,後に本症となる病変を惹起しなくて治癒するものもあるし,慢性中耳炎の治癒経過を観察しても,治癒後に瘢痕性病変,肥厚性変化を残し,それによつて中耳内に癒着性変化を起こしたり,治癒機転としての表皮化によつて癒着症となることが多いのであるが,他方には瘢痕性病変も肥厚性変化もほとんどなく癒着性変化を惹起しないものもある。この事実からして中耳癒着症発生にはある因子が作用するか,何らかの因子の存在することが必要であることを知る。またこうした本症発生の基本的な問題の他に臨床的に見ると本病変によつて起こつた障害はどのようにして排除するのがよいのか,さらに本病変が再形成されないようにするにはどうすべきかを検討して解決しなければならない。
そこでこれらの問題について検索して見たのであるが,これら問題の検討は他面には鼓室成形術後における耳漏の出現および耳小骨の癒着,内耳窓窩の閉塞あるいは鼓膜の癒着などによる鼓室成形術の目的を達しないことの解決の緒口をえられるもので,極めて重要である。
The author notes the mechanism and the basis upon which adhesive otitis media is developcd with particular emphasis on one point in the process. It is also considered from the stand-point of middle ear pathology from observations made on clinical material and experimental otitis. The author believes that the process leading to the developmcnt of adhesive otitis media is divided into 3 different stages, though there can be no sharp delimitation drawn between them.
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