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Ⅰ.緒言
耳手術時,絶対に顔面神経管を損傷してはならないが,すでに神経の露出している症例もあるので特に細心の注意が要求される。
Shambaughは内耳開窓術およびアブミ骨可動術を行なつた耳硬化症例の約5%に顔神露出例を認めたと述べているが,中耳炎のない側頭骨にすでに先天性異常として顔神管骨壁の欠損,裂開が存在している。正常側頭骨については解剖学的,組織学的に研究された結果が報告されているが,Dietzel 57%,Beddardは54例中14例(25%),吉永64例中21例(33%),飯田27例中19例(70%),長倉28例中7例(25%)ときわめて頻度が高い。それに対して術中に認められた頻度はCawthorne357例中6例(1.7%),Kaplan 100例中7例(7%),Shambaugh 5%と非常に少ない。しかし非炎症性の場合と異なり,慢性中耳炎手術時には骨炎や真珠腫による骨破壊が加わる結果,アブミ骨可動術中に見られる頻度よりは高率であろうと推測される。一方,Kettelによれば慢性中耳炎の術前顔神麻痺例がすでに1.7%あり,著者の例でも1.6%に見られている。このような術前麻痺例は手術をしてみると広範に顔神露出のみられるのが普通であるから,一般耳手術時に見られる顔神露出例は術前麻痺の頻度よりかなり高いのではないかと考えられる。しかし,関谷氏の鼓室形成術例の統計では3〜4%で比較的少ない。そこで著者は,最近4年間に行なつた115例の耳手術例について手術時に見られた顔神露出例をできるだけ詳しく検討してみたのでその結果を以下に述べてみたい。
Thirteen cases of exposed facial nerve were met with in 115 cases of mastoidectomies and other related ear operations (11.3%). In simple mastoidectomies this condition was not revealed but in radical operations its occurrence was as high as 25%. In other words this condition is most likely to be revealed in cases where middle ossicles require manipulations.
Exposed facial nerve may be found the most frequently in cases of cholesteatomatous involvements. But, the latter condition does not seem to be a prerequisite of the former.
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