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I.はじめに
一つの生物学的現象は,その発生機序において理論的根拠なくして起りうるものではない。医学上の一見奇異と思われる事実も,その事実に対する裏づけは,いつの時期かにおいて明らかにされるものであろう。
私らの一人豊田は30数年前,上顎癌手術後,術創に腫瘍の局所再発をみた患者で,たまたま重症丹毒に罹患し,生死の境をさまよいながら,丹毒の治癒とともに,術創の腫瘍組織が消滅し,完治の状態となつた症例を観察しえた。しかしこの現象についてはまつたく不可解な一臨床経過として記憶に止めたにすぎず,今日までその解明の手がかりをもえなかつた。
しかるに,ここ2,3年の問に同様の事実を再び経験し,悪性腫瘍と丹毒の関連性について,改めてその因果関係に関し一つの示唆を与えられ,今後の癌治療の開発に新しい分野をえたと考えられるので,この臨床例を略述し,あわせて考察を加えたいと思う。
The authors report 4 cases of maxillary cancers which during their course of treatment were affected with superimposed erysipelas infection. Because of this secondary infection the cancer tissues in the lesion were found to be, either, destroyed or the lesion itself was greatly diminished in size. The mechanism of this change may be due to production of streptolysin of which Okamoto calls the RNA-effect.
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