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Ⅰ.緒言
戦後,わが国において盛んになつてきた鼓室成形術は,その手術手技において目ざましい発達をとげ,Wullsteinの分類の手術術式もかなりmodificateされてきててる。さらに今日では,鼓室成形という再建的手技の考案からもう一度昔にひるがえつて,慢性化膿性炎症の治療をより重視する人々1)も出てきた。かくて,鼓室成形術において,中耳腔に対して微細な手術が行なわれる反面,乳様蜂窩の削開を必要とする症例において大きな空洞として残されたoperated mastoid cavityは,術後種々なる不利な点を生じせしめた。すなわち,痂皮形成による移植皮弁の炎症,あるいは潰瘍形成,術後性鼓膜穿孔また骨炎などを起しやすく,また,音響感覚的には,音の共鳴器としての洞の変形による音の歪み,あるいは明瞭度の変化が予想されている。この内,とくに術後創腔内の炎症の再発の問題は,mastoidplastyなどの手術術式とも関連して論じられてきている。ことに,術後創腔が持つ形態的変化により,移植皮弁およびその他の軟部組織が,なんらかの影響を受け術後経過を不良ならしめる場合がもつとも多い。これは壺状を呈する術創腔内の温度ならびに湿度が重要な問題となるであろう。しかしその測定部位が狭小なので,従来の測定器具では測定困難であつたため,今日までこれに関する報告をみない。
わたくしたちは,この目的に適した電気湿度計および熱電対温度計を用い鼓室成形手術創腔内の温度および湿度を測定し,術後経過と対比して検討したので報告する。
An attempt is made to obtain the state of temperature and humidity within the wound cavity following tympanoplasty. The temperature was measured by the use of thermoelectric thermometer supplied by Nippon Electronics Works, and humidity was recorded by means of electro-humidity-meter, Minima Sensitive Humidity-meter', the product of Showa Chemico-Physical Instrument Company.
It was revealed that, when the wound is making a favorable progress towards healing both, the temperature and humidity within. the cavity are low and vice versa for the unfavorable.
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