診療鎖談
喉頭癌と誤診せられたる護謨腫性潰瘍
秋沢 明
pp.284
発行日 1965年3月20日
Published Date 1965/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203409
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時は昭和4年2月1日,私が郷里高知県佐川町で10ヵ年間全科医を開業して,大正14年8,月に高知市帯屋町に出て.秋沢耳鼻咽喉科病院を経営した中頃であつた。
高知病院耳鼻咽喉科々長高崎琢男博士の許に御大典のありし10月に入院して4ヵ月を経過する,高知県安芸郡安田町の山脇嘉一と云う者であるが,実は御大典の頃咽喉を患い,高知は勿論 神戸,大阪,岡山等にて医博の診断を受け,遂に京都大学に至り.総計12名の医博の診断を受けたる結果喉頭の癌腫と確定,(京大にては患部の切片標本に癌組織ありと)して手術を施し喉頭を切除すれば,一生無声となるとの事にて,電気や ラヂウムの療法を勧められて,昨年10月高知病院に入院したるが,電気やラヂウムにて刺激する毎に腫脹を来し,疼痛を訴え,耐えがたきために時々休みては更にかけ,幾回となく反復する中,この頃は腫脹が取れなくなりて,今日は咽喉部の腫脹と疼痛の為めに,水をも飲み込み能はぬ状態に至り,尚其の上始終局部に,疼痛ありて,1日に何回となく診療室に通いて塗附薬の処置を受けしも科長からも断わられる有様にて,困るから,是非何とか当院の診療を受け度いとのことであつた。
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