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小児神経学からみた小児の言語障害
鈴木 昌樹
1
1東京大学医学部小児科学教室
pp.1181-1192
発行日 1964年12月20日
Published Date 1964/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203364
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Ⅰ.緒言
小児の言語障害は日常しばしば遭遇するに拘らず,従来は主として教育学者や心理学者の手に委ねられることが多く,医学の領域において関心が深まつて来たのは比較的最近のことといえる。一方心身障害児対策が社会の要請となつて来た今日,言語障害児に対する治療教育の必要性が声を大にして論ぜられるようになつて来た。しかしながら,一口に言語障害といつてもその成因はさまざまであり又治療に際しても種々の身体的並びに心理的因子が介在しているため,各方面よりの密接なチームワークがなければ到底その成果は期し難い。実際の治療は主として言語治療師(speech therapist)によつておこなわれるにしても,小児科医,神経科医,耳鼻咽喉科医,更に心理学者,教育者,social workerなどがおのおのの専門的立場より関与することが必要であり,この点本邦ではなお理想的な言語障害の診療体系にほど遠いといい得る。
成人においては既に100年前,言語中枢の概念が確立され,神経学的な立場より論ぜられて来た。しかしながら小児の言語障害においてはこの方面よりの研究は極めて少い。これは言語によるコミュニケイションが未だ成立していない小児に対して可能な神経学的検査に自ら限界があり,且つ成人に使用されている系列テストが困難なためであろうが,可能な限り神経学的立場より小児の言語障害へのアプローチをすすめることは,その成因を考える上にも,治療の方針を定めるためにも重要なことと考える。
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