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頭部外傷による耳症状の治療と予後
岡本 途也
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1関東労災病院耳鼻咽喉科
pp.1087-1096
発行日 1964年12月20日
Published Date 1964/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203354
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まえがき
交通及び産業の発達と共に頭部外傷が次第に増加して来た。その頭部外傷には耳鼻咽喉科領域に関係が深いと思われる症状を示すものが非常に多い。しかし頭部外傷は単一疾患ではなく,原因が明瞭な疾患の一群である。そのため頭部外傷と一口に云うがその侵された部位及び状態は区々であり,同一症状を示したからと云つても障害された部位及び状態が同じであるとは限らず,又逆に同一部位が障害されても同一症状を示すとは云えないのでその診断は非常に困難である。聴器は頭部の両側にあり,頭部外傷により障害される事は勿論であるが,難聴,耳鳴,眩暈等の症状は聴器の損傷によるのみならず未だその機能が十分解明されていない脳障害が関与し複雑になつている。その他,外傷と云うものには賠償その他の社会問題が関与して患者の精神状態を複雑にしているため,病状をますます混乱させている。
このような現状において頭部外傷による耳症状の治療と予後という大問題を論ぜよと云われても不可能である。ただ著者は最近5年間に約2000例の頭部外傷患者の聴力を測定し,経過を観察して来たのでその間に感じたことを記してその責任を果したいと思う。
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