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緒言
Candida albicansによるMoniliasisについてはすでに1839年Langenbeck,1842年Grubyによる諸種の報告に接するが,その系統的な研究と臨床的観察は1800年代の終りごろからの約20年間にわたるRobin,Sabou,raud,BrumptおよびLangeronに代表される学派により確立されたものと思考される。
Sabouraud等の確立した真菌学は,しかしながらPure botanical(純植物学的)な立場に立つ一部学派の批判を受け一時の混乱を経験したが,近時抗生物質の広範囲な利用により漸次増加の傾向をたどる真菌症に際して,いわゆるMedical-Mycology(医用真菌学)として再編成されたものは,期せずしてSabouraud等によるものに非常に近いものになったことはわれわれの興味を大きく引くものである。上記のごとき歴史的考察およびSabouraud一派のすぐれた臨床的観察態度を合わせ考えるに,医用真菌学はいわゆる純植物学的真菌学とは明らかに異なったものであるべきで,このゆえにこそ,われわれ臨床検査にたずさわるものが臨床家と手を結び医用真菌学の更なる発展に力を尽くさねばならぬことを痛感するものである。けだし近時めざましく発展した諸化学療法は細菌リケッチャおよび一部ビールス性疾患の治療面に対する絶大なる成果をあげつつあるが,また一方において真菌症の増加をもたらすかのごとくに見えるにもかかわらず,その病原体たる真菌の菌学的研究,菌学的検査法および真菌症の治療法等には今日なお充分な成果があげ得られていないと考えられる。われわれは数多くの真菌症中で最も一般的かつ症例も多いMoniliasisの研究を計画していたところ,今回幸いにも藤沢薬品工業殊式会社より,Candidaの分離用培地としてすぐれた特性を示す水野高田培地の多数の提供を受けたので,以下病的材料中よりのCandidaの分離同定について,われわれの行なった若干の実験の報告をする。
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