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近来とみにふえた四肢・耳の奇形はサリドマイドにのみ帰することができないという意見が多い。Petersen(1962),Smithells(1962),英保健省など多数を取扱つた報告でも,四肢・耳の大奇形の半数は,サに無関係であるとしている。本報はLiverpoo1,Birmingharn,Bootle地区1962年のectromelia(四肢の骨1個以上に著しい短縮,欠損のある状態),microtia(外耳道閉鎖,耳殻欠損)発生とサとの関係をしらべた。41399出産のうちにectro 16例,micro 4例あり。サリド販売停止の1961年11月よりさらに9ヵ月後に,ectro 3,micro 2例が生れている。この5例のうち3例はサリドを母親が使用していないことが確実であるにもかかわらずサリド奇形と全く一致する奇形であつた。サリド奇形はふつう両側性である。そこで1962年の成績を1960,1961年度のそれと比較した。サリドが出回つて最もひろまつた頃より9ヵ月後,つまり1961年の頻度が1960,1962よりそれぞれ2倍多く,ことに両側性が高頻度で,また,amelia,phocomelia等の重症が多かつた。1960-61-62合計71例のectro,microあり,内訳は両側phoco,33,micro 14,その他(amelia,橈骨欠損,1側phoco等)24。4ヵ月毎に区切ると,サリド販売量最高のユ961年初め頃から9ヵ月後の1961年9-12月期間に最も多く発生(14例),同年5-8月期間これにつぎ(12例),サリド販売停止より9ヵ月後の1962年1-4月,5-8月,9-12月期間は直線的に急減している。またサリド使用はLiverpool,BootleではBirminghamの3倍であつたが,奇形発生も前者は後者の2.5倍多かつた。サリド停止後の奇形発生減少はドイツほど劇的でなく停止後もそれを服用する婦人があつたであろうことは拒めない。本調査の結果は,rnicro,ectro式の奇形の主なる原因はサリド礼あろうということになる。
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