- 有料閲覧
- 文献概要
20数年前に私がパンジネクトミーを学会に発表した頃,雑誌現代に高橋先生の記事が出た。その中に「節骨蜂巣の手術は私が昔やり古したもので元来整形外科としてやるべきものだ。私は一時は鼻炎や蓄膿症を手術で治せないで煩悶し医者をやめようとした」とあつたので異様な印象を受けたものである。今にして思えば鼻内整形手術の事であつた。それは兎に角学会をオミットされたに拘わらず氏の病院はその後非常に繁栄して廊下にまで患者を収容する程であつた。当時の金にして数億円の財を作られたそうだ。併し関東大震災,第二次世界大戦で病院が焼かれ,その他幾多の苦難に襲われた。
氏は初め仏教を信仰されたがこれは宗教哲学で本当の信仰ではないとしてキリスト教(セブンスデー,エバンゲリスト?)に変つた。氏によるとカトリックは政治と妥協したため堕落している。即ちモーゼの十戒に背いて土曜日の安息日を日曜にしてしまつたとして氏は頑として土曜日に休診している。カトリックが偶像崇拝をしているのもその一つであると云う。数十年来聖書の研究殊に予言書の研究に没頭し,世界の終りが近いことを確信している。世界の歴史と聖書の記載を比較検討すると殆んどその通りに進行しているとか。或る時期の1〜2年間に大地震が相ついで起り,第三次世界大戦が始まり,放射能のために人類はケロイドに罹り,植物は枯れ,野菜を喰べられなくなり,水も飲めなくなり肉も口に出来なくなつて,人類はキリストから選ばれた十数万の人だけが(生者死者を問わず)キリストと共に天国に昇つてあとは全部死亡すると云う。その頃には長幼の序,上下の差別が乱れ,労資相争い,キリマト教は津々浦々に拡がるが本当の信仰は失われ,文明は極度に進歩し平和論が世界中に広まつた頃に皮肉にも世界の破滅が起る。その時キリストが再び復活するのであると云う。なんとも恐ろしい話である。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.