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Ⅰ.緒言
冷気刺激法とは冷たい空気を外耳道に送つて前庭迷路を刺激する方法である。つまり温熱刺激法caloric testの一種である。通常,caloric testは冷水または温水を外耳道に注入するために,つぎのような欠点がある。すなわち,①鼓膜に穿孔のある患者は勿論,中耳手術後の患者には中耳腔または内耳の感染をおこすから行なうことが出来ない。②外耳道に注入した液を,検査したのち充分に清拭しなければならない。③液を外耳道に注入する時に外耳道の鼓膜に近い部分に液が入らないことがある。冷気刺激法は,空気を外耳道に注入するために以上の欠点を補い,鼓膜穿孔の有無にかかわらず,手軽にcaloric testを行なうことが出来る。この方法を始めた人は,私が文献を調べた範囲では,英国のSir James Dandas Grandである。Mc Nally先生の著書Examination of the Labyrlinth in Relation to Its Physiology and Nonsuppurative Diseases 1953年にその方法と成績が記載されている。Sir James Dandas Grandの用いた装置は簡単なもので,細い銅の管をコイル状に巻き,その上に布がかぶせてある。用いる場合には布のかぶさつたコイルの上にクロルエチルをかけ,銅の管を冷やし,一方の管の端から空気を送り,他方の端を外耳道に挿入して,外耳道に冷たい空気を送るのである。この方法はすでに欧米で用いられている方法である。私は数年前からSir James Dandas Grandの装置に改良を加えて使用に便利なように工夫した。この論文では私の冷気刺激器の構造とその使用法,およびこれを用いた成績についてのべる。
The caloric test which ordinarily employs fluid medium as means of testing is inapplicable to ears with a perforated drum. To obviate this difficulty the author employs introduction of cold air into the external canal which serves to stimulate the aural reflexes.
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