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腎炎の場合扁摘を行うべきか否かについては学者によつてその見解が異るが一般に耳鼻科医は腎炎の早期に扁摘を行うべきであるとの見解を持つているものが多い。これに反し内科・小児科医の大多数は早期扁摘に反対している。それぞれよりどころとする根拠を持つている訳であるが,先ずこの問題から考えてみたい。即ち急性腎炎の早期に扁摘を行うべきか否かの問題である。
我々の行つた急性腎炎の早期扁摘例は23例あるが,早いのは腎炎発病12日目,おそくとも45日目に行つたものであるが何れも腎炎は治癒している。他の耳鼻科医の報告によつても,早期扁摘例は大多数治癒している。しかし急性腎炎殊に小児のそれは約85%は内科的治療で治癒するといわれておるから,我々の早期扁摘有効例も,扁摘をしないで,単に内科的治療のみを行つても治癒したものが大多数あつたであろうと推察される。早期扁摘が有効であることを強く主張するためには更に手術例を増やし扁摘をしないで内科的治療のみを行つた症例と比較し統計学的に検討する必要があるが,我々の経験例はあまりにも少い。それで同じ研究に関心を持つ多くの人々の症例を集計してもつとこの問題を深く研究する必要がある。内科・小児科医は早期扁摘に反対し,一般的見解としてはたとえ早くとも6週以内には扁摘は避けるべきであるとしている。Illingworthの報告によれば1927〜1938の11年間に入院した小児急性腎炎301例のうち61例(20.2%)が数カ月乃至数年前に扁摘をうけていたという。このことから彼は扁摘は腎炎の予防にならないと結論している。このうち119例は腎炎の急性期に扁摘が行われたが,扁摘が尿所見の改善に特に有効だつたとはいえないという。
A survey of cases in whom acute nephritis was cured by an early institution of tonsil-lectomy is made; the advantages inherent in the use of antibiotics in these cases are also preconsidered. It is found that when tonsill-ectomy is performed no later than 45 days after the onset of acute nephritis the chronic nephritis which may be the sequila of this condition was prevented. Disease progress of chronic nephritis was also intervened by per-formance of tonsillectomy. However, a special measure in the treatment of the patient sho-uld be considered when tonsillectomy is per-formed during the acute stage of the disease; because it is most likely to be aggravated during the period immediatay following the operation.
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