特集 鼓室形成術
皮弁下含気腔形成の諸問題—tympanoplastyとmastoid cellの再生
後藤 敏郎
1
1長崎大学医学部耳鼻咽喉科
pp.887-889
発行日 1962年10月20日
Published Date 1962/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202931
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急性中耳炎のmastoid operationの華やかであつた時代に,私はmastoidの鑿除を行なつたあとに術創の閉塞しない例に屡々遭遇して甚だ苦しんだ。そのために手術することが非常に苦痛に感じられて手術することがいやになつていた時期があつた。
当時もmastoid手術創のあとの後療法は非常に難しいことになつていて,その成功,不成功は術者の経験による高度の技術(手かげん)を要するもののように言われていた。当時私は術創が閉塞しないのは,mastoid cellを完全に鑿除しないから病的蜂窠が残るためであろうと思つて,cellをレ線像によるcontrolの下に再三(手術)掻爬を行なつて確実に採るようにしたが,それでも耳後の創孔の閉塞しない例ができていた。かかる例では創内には分泌もなく,肉芽も綺麗にしている。ただ肉芽があがらないだけである。それも最初のうちは肉芽の発生も旺盛であるが,3週頃になると肉芽は次第にatonicになつて,創腔は空洞の状態になつて肉芽で閉塞しない。従つて分泌もないのに創口は開いたままである。手術後の創口が開いたままでは治癒したことなにらないので,患者はいつまでもかたずかない。
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