特集 鼓室形成術
皮弁の栄養と着床の問題について
山本 馨
1
,
久保 正治
1
1大阪市立大学医学部耳鼻咽喉科
pp.847-853
発行日 1962年10月20日
Published Date 1962/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202925
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聴力改善を期待する鼓室成形術に於ては,鼓膜に代る植皮弁を理想的な状態で得るには如何に工夫すればよいかと言う重要な問題が常に伴つて来る。この問題の解決には先ず採取した植皮弁と植皮床との間の着床機転を究明しなければならない。そうしてこの基本的問題の研究の結果得られた知識を応用する事によつて鼓室成形術の成績は一段と向上するものと考えられる。
今日,鼓室成形術に於て移植皮弁によつて鼓膜の再生を計ると言う事は,欠損組織の充填補修により機能の改善を目指す一般外科,形成外科の植皮術と其の目的は同じであるが,ただ異る点は肉芽面上への皮膚移植ではなく骨面に直接移植するものであり,而もその一部は橋渡しの状態で張らなければならないと言う点である。従つて之等は着床に重要な因子である栄養補給と言う点で多大の問題が残る事となる。
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