特集 出血と止血
Ⅳ.輸血,補液
福武 勝博
1
,
近藤 正
1
1東京医大 第二生理(血液)学教室
pp.387-391
発行日 1961年4月20日
Published Date 1961/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202665
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I.はじめに
輸血の考えは古代からあつたが,輸血学史における最大の進歩として認められているのはLandsteiner(1900)が発見した血液群と凝集素の存在であり,その後Hustin(1914)のクエン酸ソーダとブドク糖との溶液を加えて血液の凝固を阻止した実験報告,またAgote(1914)はクエン酸のみを加えて輸血を行い,その翌年hewisohn(1915)もこの同一凝固阻止法を完成し,抗凝固剤の適量を標準化した。かく輸血に血液凝固阻止剤が使用せらるるに至つてますます実用の域に入つたが,現在において血液銀行やその他輸血協会,病院輸血部の発達により血液の入手が便利となり,輸血は臨床的応用にもまた理論的研究にも長足の進歩をとげて,広く一般医療に応用せられるようになつた。
輸血によつて得られる生理的な変化として(ⅰ)体液量および循環血液量の増加(ⅱ)血液の酸素運搬能の急速な増加(ⅲ)血液の蛋白濃度の増加(ⅳ)血液凝固性の増加(ⅴ)造血機能の有効な刺激(ⅵ)各種免疫体の負荷等があり,輸血の発達が医学の進歩に貢献したのは計りしれぬものがあるが,血液はその供給源を人体に仰ぐため,その量および貯蔵日数に制限があり,また大量輸血による副作用も軽視出来ない。殊に山間僻地,或いは戦時下の救急処置による輸血の間に合わない事があり,ここに輸液剤の出現が待望されるわけである。
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