外科保険診療の手びき・4
補液,輸血
pp.419
発行日 1955年6月20日
Published Date 1955/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201634
- 有料閲覧
- 文献概要
一般に手術を行うに際しては患者の状況及びそれに加わる麻酔の影響,手術的侵襲による影響に対しこれが対策として術前,術中,術後に補液,輸血が行われなければならない.戦後この補液,輸血の量は無暗に多量に過ぎた傾向にあつたが漸くその適正量が考えられ且適応症も吟味されて近時徐々に減量されてきている状況にある.輸液を施すに際しては常にその補液の量と共に質を考えることが必要で手術に際しては全身の中毒,低蛋白,アチドージス,貧血,ショック,血圧の下降,組織酸素の欠乏等が互に関連し合つている状態にあるのでこれに対して酸素の補給,蛋白の補給,解毒,血圧の上昇,流血量の増加を計らなければならないのでそれ等に最も適した液を注入する事が必要である.例えば大きな火傷に対しては体液の洩出は甚しいが血球特に赤血球の減少はなく血液は寧ろ濃縮されている状況にあるのでこれに輸血を多量行うことは有害無益であるからむしろ血漿を選ぶべきであり,又腸閉塞に対しても血球の失量は少く主としでクロールの減少が甚しいからこれ亦輸血よりはリンゲル液の大量を補液として選ぶべきである.失血に対しては勿論輸血によつて失われた血液を補足するに越した事はないが血液の急に得られない時には血漿によるのが適正である.
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.