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I.緒言
嗅覚障害の原因は鼻腔の畸型や鼻腔及副鼻腔の炎症性腫脹あるいは腫瘍によつて通気が嗅域に達しないために因る純物理的なものと,鼻腔,副鼻腔の長期あるいは高度の病変による嗅覚神経末梢器の変性やその他の原因に基く嗅神経の障害に因る場合,および官能性神経症性の嗅覚障害が考えられる。純物理的なものに対しては先ずその原因疾患に対する治療が必要であるが,嗅神経系の障害に対しては古くは水溶性カンフル製剤の静脈内注射が行われ,近年はAlinaminの静脈注射の効果が報告されている(大川内)が,尚十分な治療効果を期待することは出来ない。著者の一人志多はストレプトマイシンによる難聴に対し始めてコンドロイチン硫酸(以下CSと略す)を用い,その予防乃至治療効果を報告し,爾来幾多の人々によつて各種神経性難聴に対する本剤の治療効果が追試されているが,このCSが独り第8神経の障害ばかりでなく他の神経系の障害に対しても有効であるかも知れないとの推論の下に嗅覚障害のうち器質的機械的障害の存しないか軽微なものに対し本剤を試用し予期以上の効果を見たのでここに報告する。
Thirty seven cases involved with distur-bance of sense of smell, in whom very little obstruction in the nasal air passage was re-cognized, were treated with intravenous use of chondroitin sulfate. Thirteen cases reco-vered and 3 showed improvement to a certa-in extent. The agent appeared to be effec-tive towards cases that are within 1 year of the onset ; the effectivity will be shown centering about the 10 th injection.
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