- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
昭和35年5月19日新潟市のイタリヤ軒で理事会が午前10時から開かれた。これには特記する事はない。午前11時から地方会長会議が開かれたがこれには重大な議題があつた。それは地方会を各県単位にすべしと云う岡山の高原地方会長の提案があつたからだ。この主張に対しては鳥居,颯田両理事と私が以前から理事会でブレーキをかけたが,それは県の数と大学の数とが一致しない事と,教室所属の人が別の地方会に離されたり,地域的に却つて隣の地方会に行く方が近かつたりする不都合があるからだ。処がこう云う主張は余り表面に出ないので私達頑固な老人が代弁して森本会長などから「時代の相違ですな」と嫌味を云われることになる。それにしても若い?人の当事者から堂々と反対論が出ないのはどう云う事であろうか。自分は困るけれど反対すると利己的だと云われはしないか,或いは頭脳が古いと云われはしないかと恐れるためであろうか。利己主義と当然の自己の利益を守ることとは別であるし道理に新旧はないのだから勇敢に発言したらよいと思う。云わないから結局吾々の頑固さだけが残つてしまう。それは兎に角後藤(光),高原氏等が世話人となつて此案を推進することになつた。理事会がこの案の結論を出して推進しないのが怪しからん。何を愚図愚図しているのかと非難されるのも反対論が蔭でだけくすぶつているからだ。表面に強く出る主張だけをとり上げてサッサと結論に持ち込めば本当は不公平になる。声なき声を聴く理事長の態度は悪くはない。急進派の気に入らないだけである。要は反対論者が因循であるのがよくないのだ。
18時から評議員会が開かれたが,予算の処で岩田評議員から数字の誤りをつかれ,佐藤理事,太田理事も答弁に困つて立往生した。結局これはミスプリントであることが判つたが思いがけぬ小波瀾であつた。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.