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緒言
耳性腎炎とは耳炎症巣を原病巣とする病巣感染症として腎炎を合併している場合をいうが,その成立磯序は他の病巣感染と軌を一にするものと考えられている。病巣感染症の成立機転として現在広く認められている説は細菌感染説とアレルギー説で,原病巣としては扁桃,歯牙,副鼻腔等の疾患が挙げられているが耳疾患も当然原病集たりうるものと考えられる。Kindlerは1000例の中耳炎中,急性中耳炎の約2%,慢性中耳炎の約0.2%に腎炎が認められたと報告し,小此木等は357例の急性化膿性中耳炎の中,30例(8.4%)に急性腎炎を認めている。大藤は急性・亜急性化膿性中耳炎207例中9例(4%)に急性腎炎乃至腎障碍を認めている。急性中耳炎における腎炎の発生時期に就いては報告者により異なるが中耳炎と同時,数日,数週,時には2カ月後に腎炎の発生をみたという。この様に一般に急性中耳炎から急性腎炎を惹起する場合が多いが,この事は慢性の限局性炎症巣を原病巣なりとする病巣感染症一般の概念と多少矛盾している様に思われるが,我々は最近急性中耳炎から急性乳様突起炎を起し,同時に急性腎炎を合併した2症例を経験し,その臨床経過及び溶連菌抗体価の推移から考察し耳性腎炎と判定.中耳削開術を行い腎炎を治療せしめ得たのでその大要を報告する。
Two cases of nephritis of otitic origin are reported. Nephritis was found in these two cases, one a man, aged 57, and the other, an infant girl, aged 1, following immediately the nset of acute otitis media. Both cases made recovery after mastoidectomy was perormed on them.
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