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緒言
口内炎は耳鼻咽喉科領域に於いて屡々見られる疾患であり,軽いものは放置しておいても治癒するものから,重症なものは生命に関するようなもの迄ある。その原因に関して種々の説が記載されているが,その中主なものは消化障碍説,異常体質説,内分泌障碍説,ヴィタミン欠乏説,細菌感染説,等であり,最近では,ヴィールス説,アレルギー説が唱えられている。一般的には局所の抵抗力の減弱,又は局所の感受性を鋭敏ならしめる様な状態に,更に何か直接的な原因,例えば歯牙の刺戟とか細菌感染とかの原因が,加わつて疾患が発生するように思われる。そしてこの様な状態を形成する因子として神経,特に自律神経系が重要な役割を演じているのではないかと考えている。1929年A. D. Speranskyは実験的にモルモットの三叉神経の末端を刺戟することにより,口腔内に潰瘍の発生することを報告しており,我々も之を追試して確認した。又1934年J. Reillyは自律神経の過剰刺戟により種々の臓器に病変を生じ,更に自律神経を遮断することによつてこの病変を阻止し得ることを報告した。そこで我々は自律神経系を抑制することによつて口内炎をより速かに治癒に導き得ないものかと考え,自律神経遮断剤たるクロールプロマジン並びにプロメサジンを種々の口内炎に使用して良い成績を得たのでその結果を報告する.
Iida and associates believe that, from theworks advanced by A. D. Speransky and that by J. Reilly, disturbances in the function of autonomic nervous system may well be the cause bringing on the attack of aphthous. Basing their beliefs upon such a premise theauthors employed chlorpromazine and promethazine in few cases of aphthous which showed no reponse to other forms of treatment. The results thus obtained were good.
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