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緒言
ベル麻痺(Bell's palsy)とはCharles Bell(1812)による第7脳神経の構造,機能及びその末梢性麻痺に関する研究に因んで名附けられた末梢性顔面神経麻痺の事であるが,今日では最初Bellによつて発表された外傷,感染,新生物及び他疾患等により惹起される原因明白な麻痺ではなくて,これら原因を認め難いものを指す様になつている。即ち本邦に於ても従来より原因不明なる儘にロイマチス性,本態性或は寒冷性等と呼ばれて来たものである。然し,あらゆる原因による末梢性顔面神経麻痺の中で,この原因不明の末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の占める百分率は多くの統計を総合してみるに実に70%前後に達している。
この高い発生率を示すベル麻痺の本態に関しては今日迄種々論議され様々な報告がみられる。今これらを大別してみるに神経炎症を認めずと云うものと神経炎とするもの,及び両者の混合とみなすものに分類され得ると思う。即ち神経に炎症徴候を認めず神経又は周囲組織の変性,浮腫を認めたと云う,Alexander,Röcklinghausen,Minkowski,Jongkees,Cawthron,Sullivan,Ballance,Duel,Kettel,Flodgren,Hall,Norrköping,Sweden等と,神経炎を認めず茎乳孔附近の淋巴腺が原因をなす淋巴管性のものとするFuchsに対して,伝染性機転による神経炎と考えるDéjerine,Théohari,及び膝状神経節の炎症を称えるHunt等があり,又この両者を合せ考えるものには膝状神経節の細菌感染か血管運動神経の非伝染性障碍を考えるBertein,Sargnon,神経刺戟の結果と考えるWyburn-Mason,筋電図的研究により神経変性と非変性及び両混合型があるとするWeddle等があり,Oppenheimの如く神経炎又変性,両変化の解析は何れにしても首尾一貫して行われ難しと見解を保留した者もある。又一方我が国に於ては家兎を用いての実験的研究で稲坂は神経の冷却による麻痺を記録し,高木は圧迫による麻痺を報告している。以上の如く様々の見解があるが結局,最近の趨勢の趣く処は大体次の様になりつつあると考えられる。
Akagaki and Mohri report that in 9 cases of Bell's palsy with which they recently experienced the use of 7 % solution of sodium bicarbonate by intravenous injection effected immediate recovery of the symptoms of paralysis. Concensus of opinion in recent years on the etiology of Bell's palsy being the affection of the facial nerve taking place at the region of the stylomastoid faramen by such changes as arteriospasm, local ischemia or edema. In order to relieve these conditions vasodilating agents may be administered, stellate ganglion may be exterpated or the nerve may be relieved of its pressure by edema by surgical decompression of the fallopian canal.
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