論説
動搖病に對する重曹注射の意義
長谷川 高敏
1
1長崎醫科大學
pp.43-48
発行日 1948年5月1日
Published Date 1948/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200053
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動搖病とは、船暈や汽車暈或は航空病等のように、乘物の動搖がもとで起る病氣をさすのです。尤も航空病には、高空の空氣の變化がもとで起る高空病と、機體の動き即ち加速度がもとで起る狹義の航空病とがあつて、動搖病に屬するのは後者狹義の航空病です。1932年Starkensteinが、是等を總稱してBewegungskrankheitと呼ぶと良いと言つて居りますが、私も是に賛し動搖病という言葉を用つて居ります。
動搖病とはどんなものか、其本態に就て私共は大分前から研究に從事して居ります。先づ動物を搖り動かせて、どんな現象がどうして起るか、研究を始めました。先人の記載によると、動搖の際發生する加速度が迷路を刺戟して、其結果動搖病の起る事は略々想像せられます。それで、絶えず加速度を發生する動搖裝置を作つて動物を搖り動かせ、研究を進める事にしました。此裝置を私共は連續昇降裝置と呼んで居りますが、動物を固定した昇降板が43糎の距離を1分間に63囘上下往復する樣になつて居ります。此昇降板は、廻轉輪の一點につけられた連結桿によつて動かされるので、單弦運動を營み、刻々加速度を發生します。
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