今月の主題 腎疾患診療のトピックス
透析療法
重曹透析
高橋 健
1
,
越川 昭三
1
Ken Takahashi
1
,
Shozo Koshikawa
1
1昭和大学藤が丘病院・内科
pp.1602-1603
発行日 1982年9月10日
Published Date 1982/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217920
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近年,透析療法の進歩に伴い円滑な透析を妨げる臨床症状の発現を最小限度におさえる無症候透析を目標にいくつかの新しい治療法の検討がなされている.Hemofiltrationなどの新しい血液浄化法や高Na透析や重曹透析(以下BC透析)などがその代表例である.
BC透析については,歴史的に振りかえれば,透析技術の開発初期にKolffらにより使用されたものの再検討にすぎない.KolffらはHCO3とCaやMgを混和するとpHの上昇により炭酸塩の沈殿が生じてしまうため,透析中CO2をbubblingし,pHの上昇を抑えて沈澱の発生を防ぐ方法を用いた.透析液のアルカリ化剤としては,その後Mion1)らによりアセテートが開発され,その使いやすさ(滅菌作用,溶解性,および経済性)から一般に広く用いられるようになった.アセテートは肝,筋,腎皮質などでAcetyl-CoAをへてTCA cycleに入りCO2とH2Oに変換されるが,体内での代謝処理能力以上にアセテートの流入のある場合や,その処理能力の低下している肝障害時などでは血中アセテート濃度が増加する.一般的には血中アセテート濃度が10mEq/lをこえると,その血管拡張作用により末梢血管抵抗が減少し,血圧低下などの透析不均衡症候群の一因となると報告されている2).
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