増刊号 Common Disease 200の治療戦略
神経・筋疾患
ベル麻痺
岡安 裕之
1
1聖路加国際病院内科
pp.264-265
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904074
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疾患概念と病態
ベル麻痺は特発性の末梢性顔面神経麻痺であり,一側性の麻痺がほとんどである.発症は亜急性で,寝て起きたら気がつくようなときから,鏡を見ておかしい,あるいは家人から「顔の動きがいつもと違う」といわれてから数日のうちに麻痺が明らかとなることまである.発症すると,麻痺は急速に完成し,1週以上麻痺が進行することは少ない.半数近くの症例で感冒様の症状が先行する.表情筋の一側の麻痺に加えて,早期に約半数で耳介後部乳突突起の部分に痛みを認める.これより少ないが,舌先の味覚の低下,聴覚過敏,涙の分泌の異常(低下あるいは亢進)を認めることがある.
病態は顔面神経管内での顔面神経内の浮腫と,それに伴う虚血,さらに虚血による浮腫の増悪が悪循環を形成し,神経の脱髄と,さらに進行すれば軸索変性が生じる結果,顔面神経の伝導が障害され,顔面表情筋の麻痺が生じるものと考えられる.初めに浮腫が生じる原因としては,先行感染に伴うアレルギー性機序や寒冷曝露が挙げられているが定説はない.
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