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緒言
Castan KOWAとはPara-Hydroxy-Propiophenone(H-365)製剤にて,1938年Dodd等が新しいタイプの合成発情Hormonとして発表した物質で,其の後1949年Marcel,Perrault等は多くの動物実験並に臨床成績から脳下垂体の向性腺作用,就中FSH(卵胞刺激ホルモン),TSH(甲状腺刺激ホルモン)の作用を抑制すると言う説を提唱し,臨床上,閉経期の顔面紅潮,悪性脈絡膜上皮腫,バセドウ氏病等に有効である事を報告した。以後相次いでフランス,ドイツを中心に米国,英国,南米諸国等で研究がなされ,即ちBun-Hoi(1950),Lacassagn(1950),Gennes(1950),Heller(1950),Fareign,Lettes(1951),Martella(1950),Mahaux(1950),Husslein(1951)Money(1951),Paulsen(1951),Bauer(1952),Charles,Robert(1952),Brunell(1953),Studer(1953),Weissbecker(1953),Pockrandt(1954),Albert(1954)等の発表を見,我が国に於いても野嶽,植田,牧野,竹村,山田,赤須,小林,富川,渡辺,藤井,原田,林,四位例,鈴木,高瀨石塚,藤森,守,鳥居,柴崎,中尾,須之内等の数多くの報告を見て居るが,此れ等の報告の治療対象は,1.更年期,青春期,成熟期婦人の性的障碍。a.更年期出血。b.下垂体性無月経。c.更年期脱落症状,更年期性高血圧。d.自律神経失調症又は自律神経症。e.月経前乳房痛,マストパチー。2.a.甲状腺機能亢進性月経性子宮出血。b.バセドウ氏病。3.a.月経に関連性ある皮膚疾患。b.更年期性皮膚疾患。4.a.下垂体前葉機能亢進乃至それと推定される状態。b.広義の内科的自律神経系異常症(気管支喘息,蕁麻疹,クインケ氏浮腫,糖尿病,唾涎症)。5.a.脈絡膜上皮腫。b.悪性腫瘍等であつて,吾が耳鼻咽喉科領域には未だ使用した報告をみない。只婦人科領域に於て更年期障碍性耳鳴,眩暈に応用し好治験を得て居るに過ぎない。
然し,日常外来に於て更年期の婦人で咽喉頭感覚異常或いは乾燥感,又耳管狭窄症等の器質的障碍をともなわないで耳鳴を訴えて来る患者を多く見る。此の様な患者にも本剤が治療効果を有するのではなかろうかと考え多数例に試用した処見るべき成果を拳げ得た。そして次第に其の試用患者の年齢範囲を拡げ,又男性にも応用した処,上記疾患の他に乾燥性咽喉頭炎並びに所謂咽喉頭神経症にも効果がある事が認められ,一連の臨床観察を行い一応の結果を得たので報告する次第である。
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