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耳鼻咽喉科領域手術に対するトロンビンの止血効果について
金子 善一
1
,
宮崎 和
1
1東邦大学医学部耳鼻咽喉科教室
pp.521-527
発行日 1957年6月20日
Published Date 1957/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201807
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耳鼻咽喉科領域の手術は解剖学的特殊条件に制約されるために,出血に対する考慮は,完全な手術目的遂行上重要な因子とみなされる。然しながら従来幾多の止血剤の創製並びに研究報告,或は止血タンポンの改良工夫等がなされているが,何れも一長一短があつて未だその秀逸なものは尠い。
血液凝固機転に関する研究は,ここ10数年来特に進歩し,プロトロンビン→トロンビン反応を促進する血小板因子を始め,安定因子及び不安定因子の解明の研究に伴い,トロンビンについての研究も著しく進歩を示し,米国Seegers(1939)等により,之を純粋に化学的に分離し,純度の高い製品を得る事に成功し,以来臨床面に実際使用される様になつた。即ち耳鼻咽喉科領域においてはStevenson(1944)は鼻内手術に応用し,Mc Govern(1946)は扁桃摘出術後に用い,その止血効果の顕著なる事を報告している。本邦においては昨年加々美氏等は,このトロンビンを使用して血友病患者の血腫の外科的処置に成功し得た事を報告している。以来外科,内科方面の臨床報告例に接する様になつたが,耳鼻科領域における報告例は未だ見当らない。
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