耳鼻咽喉科領域手術に対するReptilaseの止血効果について

THE EFFECT OF REPTILASE FOR HEMOSTASIS IN THE SURGERY OF OTOLARYNGOLOGY

　緒言

　耳鼻咽喉科領域の手術は一般にその解剖学的特殊性の為に狭隘且つ深部の視野の中で微細な手術操作が要求されることが多い。又術野に分布する血管も複雑豊富であり，その為に止血操作が困難であり，術者は常に出血及び止血について特別の関心を払わなくてはならない。現在止血機構の種々な観点から異つた作用を有する種々な止血剤が発売されているがなお満足さるべきものはない。

　止血機序は血管機構，血小板機構，血液凝固機構の三要因が考えられている。このうち血管機構に関する病態生理学的追求は，現今盛んに行われているが，未だ未解決の問題が多い。これに対して，血液凝固機構については1904年Morawitzその学説を発表して以来，目覚しい進展をなし，第一表に示す様な新しい血液凝固の機序が確立されるに至つた。

The new hemostatic agent reptilase is a detoxified snake venom with properties simi-lar to that of thrombin which in no way interfere with prothrombin formation; it also has a property by which coagulation of blood occur even in absence of calcium. Favorable results are obtained by use of this agent in various operations in the field of otolaryn-gology; there was no undesirable side-effects.