綜説
トロンビンの止血効果について(第1報)
岩佐 博
1
,
劔持 守
1
,
松田 信良
1
,
吉永 帰一
1
,
稻葉 英造
1
,
古橋 正吉
1
,
宇田 敏孝
1
Hiroshi IWASA
1
1東京医科歯科大学第一外科教室
1Department of 1 st Surgery, Tokyo Medical and Dental University
pp.277-280
発行日 1956年4月20日
Published Date 1956/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407201796
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従来各種の局所止血剤が創製せられ,外科手術其の他に用いられ,それらの優劣について幾多の報告がある.しかし或るものは異物として長く局所に止まりて刺戟作用を有し,或いはその効果顕著ならず,好んで今日に至る迄使用せられているものは極めて少い.
此の間にあつて,トロンビンは既に1939年Iowa大学のSeegers等により肝臓の実質性出血,骨手術時の止血容易ならざる骨髄出血に用いられて著効を治め,その後欧米各国に於いて各種臨床例に用いられている.即ち1945年Bandler等は前立腺腫瘍摘出に際し経尿道手術時に之を使用し,顕著な止血作用を認め,1949年Bernet,Cohenは食道の静脈瘤にMiller-Abbot管によるトロンビンのタンポンを行い,その出血を止め,「同年Ka—namore,Elliotは同様の治験例を報告している.更にDaly等は1949年上部胃腸管よりの出血を緩衡液並にトロンビンの経口的投与によりて治療せしめ,止血効果を報告している.
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