特集 耳鳴と眩暈
第1章 耳鳴
精神科で扱う耳鳴と眩暈
竹山 恒寿
1,2
1総武病院
2東京慈恵会医科大学
pp.756-762
発行日 1955年12月25日
Published Date 1955/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201454
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耳鳴や眩暈の成立機制に就ては明確でない点が多く,その言葉の概念規定が既に混乱している。一口に耳鳴といつても,それは耳周囲騒鳴periotisches Geräuschや頭鳴Kopfsausenまで含まれているし,要素性幻聴が耳鳴として訴えられる場合すらある。眩暈に就ても同様で,体動揺感のみならず廻転視や動揺視・変形視さては離人症体験Depersonalisationまで眩暈として訴えられることがある。単に耳鳴や眩暈の訴えがあつたからといつて,それを直ちに症候名としての耳鳴や眩暈にあてはめてしまわずに,その実態が正確に把握されなければならない。この訴えが最も多くみられるのは,精神科領域では神経症を含む心因性疾患の一群である。神経症などでは,この訴えを以て精神科ばかりでなく他の科を転々と歩きまわるものであるから,この問題に就て深い関心がむけられるべきであるけれど,本邦に於ては僅かに森田・高良・古閑・蔡・高橋らがとりあげているだけである。精神科の領域でテンカンや動脈硬化のばあいにも,耳鳴や眩暈がおこるけれど,ここでは純粋に精神性基因あるものに就てだけ述べて,その精神病理や治療にふれてみよう。
動脈硬化・テンカン・脳腫瘍等を除いて精神科を訪れた患者のなかで,どのくらい耳鳴や眩暈が訴えられたか調べてみた。材料は288名にのぼつたが,統計の便宜上,神経質症が100名に達した数で打切つた。われわれのところの特殊性もあつて,神経症や覚醒剤中毒症が他の所より多少多いようであるが,このなかで耳鳴や眩暈の訴えがあるものは99名に達し,やはり神経質に一番多く,頻度からいえば神経質と反応性鬱病に高い。
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