特集 耳鳴と眩暈
第1章 耳鳴
耳鳴の発生機転についての概況
大和田 健次郎
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
pp.735-742
発行日 1955年12月25日
Published Date 1955/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201451
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緒言
耳鳴の成因については,結論としては未解決の部分が多いように思う。成因についてはいろいろの研究が行われている。然しその多くは解剖学的根拠に立つた推定や,症状として現われた現象から考えた憶測が多い。又動物実験から耳鳴と考えられるものを観察している報告もある。耳鳴の成因が決定的に掴み難い根本的の理由は,動物に耳鳴があるかどうかを検査する方法がない現状であるからと思う。
耳鳴は感覚の中でも異常感覚であつて,その発現の状態も複雑で,これをきれいに整理することが難しい。解剖学的にコルチ氏器の退行変性を認めても,それが耳鳴の原因とは必ずしも云えない。難聴だけあつて耳鳴の無い例も沢山あるし,正常聴力者でもかなりの数に耳鳴のあることも報告されている。
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