2頁の知識
耳鳴り
大和田 健次郎
1
1慶応医学部耳鼻咽喉科
pp.34-35
発行日 1957年7月15日
Published Date 1957/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910388
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耳鳴は耳痛,耳漏,難聴,眩暈と共に耳の5大症状の一つであるが,まだ解明されていない多くのものを含んでいる。
耳鳴の原因の中には,中耳伝音系の振動,鼓室神経叢の刺激,聴細胞や聴中枢の変性,血管系の異常等が数えられる。中耳伝音系の振動による耳鳴の原因は耳内筋の痙攣によるもので,鼓室小骨が振動しこれが内耳に伝わつて耳鳴となる。この場合は鼓室小骨と共に鼓膜も振動するので,患者の耳と検者の耳をゴム管で連絡すると音をきくことが出来る。これを他覚的耳鳴と云つている。鼓室神経叢は鼓室岬にあつて,内頸動脈の交感神経叢や鼻咽腔,口腔等の神経と連絡しており,一方この神経叢から前庭窓や蝸牛窓に枝を出し内耳を刺激して耳鳴を起させる。内頸動脈の血流の変化や血管壁の異常は,交感神経の異常刺激となり鼓室神経叢に伝達される。急性中耳炎もこの神経叢の刺激になるし,口腔や咽頭等の炎症,不正咬合の時にもこの神経叢を介すると云う。耳鳴の治療に鼓室神経叢の麻酔や神経叢除去の手術法が行われている。
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